2011.03.08
社員R

ジェフリー・ダウンズのこと

過日、musicrader.comというサイトにて、「オールタイム・大仰なシンセソロBEST12」という企画をやっていました。1位には「やっぱりお前か」という感じでリック・ウェイクマンが選出されていましたが、1位以下のランキングを見てみると、なんと6位にジェフリー・ダウンズのエイジア・イン・エイジアでの演奏が含まれているではありませんか。

https://www.musicradar.com/news/tech/the-12-most-bombastic-synth-solos-of-all-time-208829/8

エイジア・イン・エイジアについては説明が必要でしょう。

エイジアは1982年に結成されたスーパーグループで、デビューアルバム「Asia」は全米ビルボードチャート1位を記録する大ヒットになりました。翌83年に発表されたセカンドアルバムも好調で、その勢いでワールドツアーを開始します。その皮切りとなった日本武道館公演は、MTVにより世界初となる全世界衛星同時生中継ライブ「エイジア・イン・エイジア」として企画されます。
しかし、この歴史的イベントを前にして、ボーカル兼ベースのジョン・ウェトンが脱退。その代役として白羽の矢がたったのは、元EL&Pのグレッグ・レイクでした。

しかし、この時期ちょうどお休み期間であったグレッグ・レイクに昔日の面影はなく、なにやらウルトラマンタロウに抜き打ち出演した団次郎といった風情漂うメタボぶりに関係者一同打ちのめされます。

しかしこの帰ってきたウルトラマンならぬ帰ってきたメタボマンが、歌も歌えてベースも弾ければ、ビジュアルのみの損失で済んだのですが、声は出ない指は動かないの三重苦なのでした。誰だこんなの連れてきたの。

正直この時点でのグレッグ・レイクよりましなミュージシャンは世界に数百人いたと思われますが、元EL&Pメンバー、カール・パーマーのお友達枠なのか、もしくは大きく金の動くイベントでプロモーターを納得させることのできるネームバリューを持った代役がレイクくらいしかいなかったのか、真実のほどは定かではありません。

さて、メタボ弾けない歌えないのボーカルを、マイクスタンドの前に立たせてのライブはそれなりに寒々しいものであったのですが、そんな中なんとか全世界が注目するこのライブを盛り上げようと孤軍奮闘したのが、キーボードのジェフリー・ダウンズでした。

[youtube:https://www.youtube.com/watch?v=pEQfuRDpEOs]

ビデオでは、まずいきなり3:30までにわたる、カール・パーマーのドラムソロから始まります。なんじゃこのおっさんはと思うかもしれませんが許してあげてください。この人この時点でもう十年以上同じことやっているのですから。途中立ってバスドラ叩きながらTシャツを脱ぎ、銅鑼を叩くところまでEL&Pの頃と一緒です。1ステージで最低5分以上ドラムソロやらないと死ぬんです。

と、自分さえ目立てりゃ後どーでもいいやパーマーのソロが終わると、ライブの大トリにして彼らの最大のヒット曲、Heat of the Momentが始まります。

ここでレイクはなんとかギリギリの線でこなしますが、曲終盤のハウのギターソロでそれもおじゃんとなってしまいます。そこに颯爽と現れるのが、ジェフリー・ダウンズです。ムーグのショルダーキーボード、moog Liberationを抱えて、なんとか盛り上げようとステージを右に左に走りまわる、その懸命さ、健気さ、献身ぶりは、見るものの涙を誘うのでありました。ぅぅ、ホントにいい人やなあ。

この後、エイジアは何度も空中分解の危機を迎えますが、誰が脱退しようとジェフリー・ダウンズは踏みとどまり、エイジアの名前を守るのでした。まるでブラックサバスのトニー・アイオミのように。

というわけで、個人的ロックミュージシャンいい人選手権第一位はジェフリー・ダウンズなのであります。彼のおかげでエイジアは2008年にオリジナルメンバーを再結集するのでした。

と、最近弊社ブログではやっつけが流行っているようなので、私もやっつけてみました。

(社員R)

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