突然ですが、みなさんが書店で本を選ぶときの決め手はなんでしょうか?
・著者が好きだから?
・ベストセラーだから?
・新聞の書評で面白そうだから?
・有名人が推薦していたから?
・書店で実物を見たら、きれいな装丁で、なおかつ値段が安いから?
・書店のお姉さんがきれいだったから?
・・・等々、その時々で重大な決め手があるはずです。
(でも書店にはきれいなお姉さんはいません。。。と誰かが言ってました)
私の場合は、本の帯(いわゆる腰巻き)の文句に惹かれて買ってしまうことが多いです。
今回買った本の腰巻きには、「ヒトはそれほど賢いか?」という挑戦的な文字が記されていました。
なんか気になりますね。
どう読んでも上から目線です。
しかも「人間」ではなく「ヒト」です。
「間」の字がないのです。間抜け(マヌケ)ということです。
・・・そういうつまらないことを考え出すと、その本を買わずにはいられません。
『生物学的文明論』(本川達雄著 新潮新書)は、生物学者である著者が、環境問題やエネルギー問題、高齢化社会や国の財政問題を”生物学的発想”で考察してみた。という本なのです。
冒頭の三章までは、サンゴ礁とそこに棲む生物を例に神懸かり的な絶妙な共生関係を具体的に説明してくれます。
例えば、動物であるサンゴと植物である褐虫藻の共生関係。
・褐虫藻はサンゴの排出した二酸化炭素を利用して光合成でアミノ酸を生成し、サンゴに栄養分として提供する。
・サンゴの排泄物は褐虫藻が利用する(リン等が含まれている)。
・サンゴは褐虫藻に食事の世話になりながら、自己複製しながら成長し、サンゴ礁を拡大していく。
・褐虫藻はサンゴからサンゴ礁という快適な住まいを提供してもらう。
サンゴと褐虫藻は夫婦以上の腐れ縁関係にドップリ浸かりながら、さらに美しいサンゴ礁を他の生物の住空間として提供しているのです。
ところが、その絶妙な共生関係を乱す輩(やから)が現れます。
その輩が環境破壊大好きな「ヒト」というわけです。
本書では、この章以降、生物の成り立ち(体の大部分が水)や生物の形に関する考察(生物は円柱形)等々を展開しながら、ヒトは生物界の新参モノなのに、自分たちの都合(便利で豊かな社会の追究)で好き勝手やり放題だけど、それでいいのかいな?的な話になっていきます。
あまり詳しくこの本の面白さを説明すると、著者の営業妨害になるのでやめますが(実は書くのが面倒になってきたことは秘密)、興味のある方は是非読んでみてください。
実は、この著者は20年前に『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)という面白本(?)を書いていて、そのとき展開した考察が本書のメイン主題へと繋がっていったりします。
すなわち、ゾウの寿命は70年、ハツカネズミの寿命は2~3年と大きく異なるけれど、心臓の生涯鼓動数はどちらも同じ15億回で、一生につかうエネルギーは同じ30億ジュールなのです。
実はこの15億回と30億ジュールはすべての哺乳類(鳥類も)に共通です。
ということは、ヒトも同じで15億回の鼓動で寿命が来るのです。
何歳で寿命かというと、もちろん本には書いてますが、ここは敢えて書きませんので、興味のある方は計算してみてください。
ヒトの寿命は結構短いのです。
それを医学の発達や、自然界のエネルギーを無駄(!)に消費することにより延ばしているのです。
(傲慢ですねぇ、ヒトは。)
自然界のエネルギーの浪費の上に成り立っているヒトの時間(本来寿命を越えるウン十年)をどう活用すべきかというのが著者の本当の言いたいことなのでした。
賛否を含めて議論が巻き起こりそうな内容ですが、これも敢えて書きません。
生物学的寿命より長い時間を保有させていただいているヒトとしては、その時間を使ってこの本を読むのも一興かな、と書いたところでエネルギー切れとなりましたので、睡眠による回復作業に入らせていただきます。
(おまけ) ナマコは口と皮膚・筋肉(筒のような体)しかない動物で、ヒトが手で掴むと瞬時に固くなって身を守りますが、そのままもっと強く掴みつづけると溶けてしまう、という驚くべき生態をこの本で知ったのでした。(なんの役にも立たない知識ですが・・・)
F生