2012.10.25
Jackal

遠い日の記憶

ヘリウムガスを吸ったことありますか?
吸うと声が高くなるやつです。

中学生の頃、小学校で同じクラスだったU君にばったり出会いました。
U君は札幌祭りに行った帰りでした。

「おお、久しぶり。元気だった?」
しばらく取り留めのない話をした後、U君が、
「あ、そうだ。ヘリウムガス吸ったことあるか?ない?
じゃこれまだ半分くらい残ってるから吸ってみろよ。
おもしろいぞ〜」
と、手に持っていたヘリウムガスをくれました。
当時はテレビの影響でヘリウムガスを吸うのが流行っており、
お祭りの屋台でも綿飴の袋のみたいなものに入ったヘリウムガスが
売られていました。
今はどうなんでしょう。

「いいのか?」
「ああ、俺はもうさんざん試したから。じゃあまたな。」
そういってU君は帰っていきました。

すぐに試してみたい気持ちを抑え、私も急ぎ家に帰り
部屋で一人ヘリウムガスを吸ってみました。
まずは少し吸って恐る恐る声を出してみます。
「あー」
全然声が変わっている気がしません。
吸い足りないのかなと、今度は思いっきり吸って声を出してみました。
「あー」
やっぱりいつもの私の声です。
おかしいな・・・

そしてようやく気がつきました。私が一所懸命吸っていたのは
ヘリウムガスではなく、U君の呼気だといことに。うかつでした。

「がちゃがちゃのケースに爆竹の火薬をぎっしり詰めて沼田公園の
砂場で爆発させたら、砂場の砂が全部吹き飛んでなくなったさ」
よくしょうもない嘘をついたりしょうもないことをしていたU君。
半分残っているヘリウムガスをくれるといった時点で何か仕掛けられて
いることに気がつくべきでした。

あれから20年以上たちますが、まだこんなどうでもいいことを
覚えています。U君はまったく覚えてないんだろうな。

結局、私はまだヘリウムガスを吸ったことがありません。

(注意) 風船用のヘリウムガスを吸ってはいけません。危険です。
呼気は少量なら大丈夫でした。

YI

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