2013.03.19
社員R

ジャンゴ 繋がざる者のこと

先日、タランティーノ監督の新作、「ジャンゴ 繋がざる者」を見て来ました。

率直に言って面白かったです。

タランティーノがジャンゴの名を冠した、自身が敬愛するマカロニ・ウェスタンの新作を撮るというニュースは以前から聞いていました。

しかし、タランティーノのリスペクトというとキル・ビルみたいなアレなので、おそらく出来上がるものはマカロニ・ウェスタンぽい何かになるだろうというのが大方の予想だったのですが、出来上がったものは予想以上にちゃんとマカロニ・ウェスタンしており、往年のファンをも唸らせる出来に仕上がっていました。

マカロニ・ウェスタンとは、ハリウッド西部劇をイタリア人が作ったパチもんの総称ですが、本家にはないアウトローな登場人物、情け無用のバイオレンス描写、何より派手なアクションが受けて、60年代にかけて多くの作品が作られました。

その中ではイーストウッドの出世作となったセルジオ・レオーネのドル三部作(荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマン)が有名ですが、それと並ぶ有名な作品が邦題「続 荒野の用心棒」、原題Django(ジャンゴ)です。

このセルジオ・コルブッチがレオーネの荒野の用心棒の後に発表した作品は世界中で大ヒットを記録し、以後その人気にあやかってジャンゴを名に冠した作品が多数作られることになります。タランティーノは今回自身の映画をジャンゴ映画の末席に加えているのですね。

世にはジャンゴと名のつくキャラクターが多数ありますが、たいていその元祖はこのジャンゴからです。それも元をたどれば、ジャンゴ・ラインハルトというベルギーのギタリストに行き着くわけですが。ちなみにPythonのwebフレームワークDjangoもジャンゴ・ラインハルト由来らしいですが、映画のジャンゴの影響はどうなんでしょうか。

さて映画の冒頭では、のっけからいきなり元祖ジャンゴの主題歌さすらいのジャンゴが流れます

[youtube:https://www.youtube.com/watch?v=4_OiUURbYlQ]

画面に映し出されるクレジットは元祖と全く同じ赤字のマカロニフォントで、この時点で個人的におおっと声が上がります。

黒人奴隷の主人公ジャンゴは老いた賞金稼ぎキング・シュルツに身柄を引き取られ、彼のもとで銃の修行をします。このシーンのバックにかかるのが、「怒りの荒野」のメインテーマです。ジャンゴと老ガンマン、シュルツとの師弟関係というのは、「怒りの荒野」のジュリアーノ・ジェンマがリー・ヴァン・クリーフ扮する老ガンマンのもとで成長していくストーリーが原型になっています。

他にも元祖ジャンゴ同様、西部劇らしからぬ、ぬかるんだ泥濘の地面、赤頭巾ならぬ白頭巾で襲撃を企てる白人など、タランティーノ作品らしく過去作品へのオマージュは枚挙暇がありませんが、もっとも話題になったのは、元祖ジャンゴを演じたフランコ・ネロがカメオ出演するシーンです。フランコ・ネロが女性にメルセデスと呼びかけるのですが、このメルセデスとは元祖の劇中でジャンゴが最後の決闘で寄りかかる十字架に刻まれた名前なのですね。

ストーリーは奴隷として売られたジャンゴの妻を取り戻す展開へと向かいますが、このジャンゴの妻の奴隷主を演じる悪役がレオナルド・デュカプリオ。黒人の闘士に素手で殺し合いをさせる冷酷な白人地主を見事に演じておりました。また、デュカプリオの屋敷を支配する奴隷頭の執事をサミュエル・L・ジャクソンが魅力たっぷりに演じています。「最も卑劣な黒人を演じてくれ」とのオーダーをサミュエルは十二分に果たしており、また隙あれば主人であるデュカプリオに説教を始めるあたり説教俳優の面目躍如であります。

この映画、ヨーロッパでも大ヒットしましたが、どちらかというと奴隷制を描いた映画として評価されているフシがあります。この重いテーマに取り組む際に、タランティーノは結構まじめに取り組んでいてそれがよかったのかもしれません。女の尻や足をカメラで追い回したりしてませんから。デス・プルーフとかひどかったですもんね・・・

というわけで、165分と長い尺ながら大変楽しい映画です。おすすめですのでぜひ。

記:社員R

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