2013.10.31
F生

「羽生善治と現代」ほか

ちょうど今、読書週間(10月27日~11月9日)なので、最近読んだ本をいくつか紹介してみます。
皆様の読書のきっかけになれば、幸甚です。
(などという気持ちは、正直なところあまりなくて、2ヶ月に一度のこのブログのために読んでいた硬めのビジネス書を中途で挫折したため、途方にくれて、なんとか誤魔化そうと取りあえず書き始めたというのが真実だったりします)

「羽生善治と現代」(梅田望夫著 中公文庫)
羽生善治といえば、ご存知のとおり現将棋界で最強の天才棋士のひとりであり、前人未踏の七冠達成者(1996年)、永世六冠の保持者でもあります(現在三冠)。
著者の梅田望夫氏は、インターネット黎明期からシリコンバレーに拠点を構え、「ウェブ進化論」などの著書も多数あるIT業界人です、
そのIT業界の梅田氏が羽生三冠と対談し、あるいは将棋タイトル戦を観戦し、リアルタイムでWeb観戦記を書いたりしたものをまとめたのが本書です。
梅田氏は子供の頃は将棋を指したけど、今は観戦のみの「指さない観るだけ将棋ファン」です。
プロ野球ファンはプレイをしない観るだけファンが大多数なのに、なぜ将棋に観るだけファンが少ないのか?もっと観るだけファンが増えていいのでは?という切り口から、羽生三冠と同世代の棋士たちと対談をしています。

将棋の天才の頭脳と思考法が垣間見えるのですが、その記憶力と先を読む能力は人間技ではありません。
自分の対局だけでなく、ほかの人の対局の棋譜もすべて記憶していて、どのような局面でどの駒をどう動かすべきかまで頭に入っているのです。
最新の棋士たちの研究では、後手番の最初の駒の動きで負けが決まるところまで、読まれているらしいのです。
この厳しく難解な将棋を、楽しく観る指南書を目指しているのが、本書らしいのですが、将棋の定跡すら知らない私には、登場する棋士の個性を愉しむのが限界なのでした。

心に残った言葉: 将棋の研究が進んで、勝つための「高速道路は整備されたけれども、高速道路を降りたところが大渋滞。その大渋滞をどう抜けるのか?」
これは将棋に限らず、IT業界にも当てはまることなのでした。
羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫) [文庫] / 梅田 望夫 (著); 中央公論新社 (刊)

「帽子収集狂事件」(ジョン・ディクスン・カー著 創元推理文庫)
古典的推理小説の新訳版。
江戸川乱歩が傑作と言ったらしいですが、どのように傑作かは言わなかった作品で、読んでみると、どのように傑作か言ってしまうと、何かがわかってしまうという小説なのでした。
これじゃ、なんだかわからないですね。。。推理小説はネタバレ禁止ですから。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫) [文庫] / ジョン・ディクスン・カー (著); 三角 和代 (翻訳); 東京創元社 (刊)

「掏摸(すり)」(中村文則著 河出文庫)
これもミステリー。ハードボイルドというかノワール小説というか、薄いけどずっしりくる本です。
続編とおぼしき「王国」も気になります。(気になるならば、読めばいいのですが、まだ単行本なので。。。)
掏摸|中村文則|河出書房新社|送料無料

「福家警部補の再訪」 (大倉崇裕著 創元推理文庫)
これまた推理小説です。いわゆる倒叙もの(最初に犯人が出てきて、計画的な犯罪が実行される)で、刑事コロンボや古畑任三郎の系譜につらなる福家警部補が、犯罪者に粘ちっこく辛抱強く付きまとい、相手の計画の綻びから犯罪の全貌を暴き出すという、読んでいて癖になる連作集です。
次の「福家警部補の報告」が文庫化されるのが待ち遠しいです(待ってるなら、単行本を買えばいいのに買いません。ポリシーですから)。
福家警部補の再訪 (創元推理文庫) [文庫] / 大倉 崇裕 (著); 東京創元社 (刊)

「人間の建設」 ( 小林 秀雄, 岡 潔著 新潮文庫)
文系天才(小林秀雄)と理系天才(岡潔)が対談、というより雑談をしたものを出版しちゃいました。という本です。
確かに文系と理系の天才同士ですから、博覧強記でためになる(ような気がする)のですが、よくよく読むと、話が噛み合ってない。
お互いに相手を認めつつも自分の土俵に持っていこうとしている様子が面白い、といえば面白い。
こんな高尚な本を読んでいるというポーズを取るために最高の本です。(薄くて安いし)
人間の建設 (新潮文庫) [文庫] / 小林 秀雄, 岡 潔 (著); 新潮社 (刊)

と、適当に5冊紹介してみました。
いつもは1冊について書いてますが、読書週間なので、いつもの5倍です。お得感満載ですね。
「質より量か」という声も聞こえてきそうです。
しかし、羽生三冠も言っています。量がある一定の水準まで達すると質に変換するのだと。(羽生さんじゃなかったかも)

でも、5冊じゃ、量的にも足りないですね。。。反省。

F生

一覧に戻る