2018年のアカデミー賞脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』を配信サイトで見ました。
ジャンルはサイコホラー/サスペンスですが、本作の際立った点はその圧倒的「居心地の悪さ」です。
クリスという名の黒人の主人公が付き合っている白人の彼女(ローズ)の実家を彼女とともに訪れる。
アメリカでの人種間の結婚のハードルの高さを考えれば彼が身構えるのも当然です。しかし彼女の両親は意外なほどに黒人に好意的で、拍子抜けするほど。
クリスはローズの実家で時間を過ごすにつれてだんだんと違和感を覚え始めます。
黒人には好意的なのに、雇われている使用人は黒人しかいない。
パーティでは周りの白人に体つきや肌の色のことをやたらとほめそやされ、まるで調度品を鑑賞するかのようにじろじろ見られる。
スマートフォンの充電コードがいつの間にか抜けている。
禁煙治療と称して催眠術で過去のトラウマを想起させられる。
クリスの違和感、居心地の悪さ、いらだちと疑念が静かなBGMとともに伝わってくるのがすごく良い。
この疑念が巧妙な脚本によって回収されていくのですが、存分に気味の悪さを味わいつつ、しかしすっきりしたラストは間違いなく傑作と言っていいと思います。
TRM