2022.08.05
samai

人工衛星の画像についての最初の最初

はじめに

TELLUSプロジェクトで人工衛星データの加工やバックエンドのAPIを作ったり使ったりしている関係で、普通の人よりは人工衛星の画像について詳しくなってきたのでおすそ分けします。みんなで人工衛星のデータを加工しよう。

光学画像(マルチスペクトル画像)

まず、人工衛星の画像データについては大きく二種類に分けられます。可視光(青から赤)はGoogle EarthやMAPの衛星画像(GAFAはお金があるのでWorldViewを使ってると思う)でおなじみだと思います。可視光とその前後の不可視光の周波数をまとめてマルチスペクトル画像と呼んだりするようです。

いま8月の空を見上げると快晴の場合は青空が広がってますが、雲があると当たり前ですが雲に隠れて青空は見えません。人工衛星から見ると逆に雲があると地表が雲に隠されてしまいます。そのため光学画像では雲の少ない画像を探さないと真っ白けになって何も見えない画像になります。その代わり当然ながら雲がない場所ではばっちり地表面がカラーで表現されるため、そこに何があるのか、何がないのかが判別しやすくなります。さらに可視光の少し外側の波長を利用してさまざまな地表の情報を得ることができます。例えば植物の緑は、可視光の赤を吸収しますが、近赤外線はほとんど吸収されず反射されるため、赤の波長と近赤外線の波長の比をとれば、そこにどれだけ緑があるのかが計算で求められます。

NDVI(正規化植生指数) , R(赤),IR(近赤外線)として

NDVI = (IR-R)/(IR+R)

を計算することで広範囲で畑や田の作付けの状態、森林の生育状況などを調べることができます。

NDVIを0~255に正規化し、JETのカラーマップで可視化したもの。緑が濃いほど植生が高く、黄色から赤に近づくに従って植生が低くなる。NDVI=INT((IR-R)/(IR+R))*255

光学画像では単にカラー画像だけではなく紫外線や近赤外線、遠赤外線などの非可視光の情報も同時に取ることで様々な情報を得ることができます。

現在日本では通産省が主体で打ち上げたASNARO1や、JAXAが打ち上げた地球観測衛星GCOM-Cなどで光学画像が取得されています。気象衛星ひまわりもおなじみですね。また他にも民間の人工衛星でCANONのCE-SATや、ISSに搭載されたHISUIなど様々な光学データがあります。

運用が終了していますがALOS(だいち)もAVNIR2センサにより光学画像を取得していました。もちろんTELLUSにも搭載されていますが、JAXAでも無償で公開しているプロダクトがあります>ALOSオルソ補正画像プロダクト

ALOSには波長の順番で、青、緑、赤、近赤外線の4バンドの画像を取得しているため、上記ALOSのプロダクトをダウンロードして実際にNDVIの計算を行うこともできます。

SAR(合成開口レーダー)

一方、光学画像ではないので人間の目には地味でおなじみの薄いのがこちら、合成開口レーダーによる衛星画像データです。合成開口レーダーを説明しようとすると割と長くて難しい話になってしまうので、さっくり非常に波長の短い(雲の影響を受けない)レーダーによる反射データを可視化したものとしておきます。

雲の影響を受けない、波長が短いため精度が得られやすい、夜間でも撮影できるというすごいやつです。その代わりレーダーによる強度画像なので、ザラつきがでたり、ノイズがのったりしやすいです。

JAXAが延長フェイズを使って使い倒しているALOS2(だいち2)のPALSAR2が現役で今も豪雨の地すべりの観測や、地震や火山での地殻変動などを観測したりしています。

SARの特徴としては先程述べたとおりですが、レーダーの特性上一定の場所から取れば対象が変わらなければ反射角度が一定になるため、同じ場所を何度も撮影することで、地表面の小さなズレを検出することができます。代表的なのは西之島の活火山活動による島の変化ですね。

電波の干渉を使うことで立体的に地表面を捉えることができるので、今の暮らしに欠かせない衛星と言えるかもしれません。

PALSAR2はもうすぐ衛星の寿命が尽きてしまうので、H3ロケットでALOS4を早く打ち上げてほしいところです。

画像処理

衛星のデータは小型の民間のものは別として、センサーで取得した情報を様々な手法で加工して、実際に見られるようにして我々のもとに届きます。先程AVNIR2のサンプルがダウンロードできる、という部分にオルソプロダクトというのがあったのをご覧になったかと思います。

遠くから写真を撮ると中心とその外周部では歪が出てしまい、そのままでは地図と重ねることができません。そのため正射投影して歪を修正し、地図上で表示可能な画像に変換したものをオルソプロダクトといいます。

またSARでのデータは電波強度や散乱方向といった複雑なデータ(L1.1と呼ばれています)ですのでそのままでは表示することができません。そのため補正をかけて強度画像に変換し、またオルソ補正も行って地図に投影できるように変換されたプロダクトが存在します。Palsar2の場合はL2.1と呼ばれて、TELLUSの画面で実際にL2.1の画像を確認することができます。

余談

この仕事を始めた頃はSARなんてなんのためにあるの、みたいな感じで割と謎な時期が長かったんですが、L1.1のSARデータの複素数からベクトルとして強度を取り出して、みたいな作業をちょろっとやって挫折し、SARの奥深さと常に一定の情報が得られるという凄さを知ってから合成開口レーダーファンになりました。

終わりと次は

今回は衛星データって何という部分だけを取り出したので、次回は実際にpythonでの環境を構築してフリーの衛星データから何かを作り出すところをやってみようと思います。ではenjoy

samai

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