2024.12.04
アイルトン・セジ

【レーシングカート】シートステーのセッティングに関する考察

レーシングカートのセッティングにおいて、シートステー(銀色の棒)はフレームの動きをコントロールし、旋回性能を向上させる重要なパーツです。シートステーを調整することでフレーム剛性に影響を与え(抜く・固めると表現することが多い)、コーナリング時のインリフト(イン側後輪が持ち上がる動き)を調整することで旋回性能を最適化します。本記事では、前側・後側のシートステーの特徴とその効果、またその解釈について詳しく考察します。

リアを抜くとは
「リアを抜く」という表現は、レーシングカートのセッティングにおいて、フレーム剛性を意図的に弱めることを意味することがあります。(別解釈もあり)この調整により、カートのリア(後輪周り)の動きを柔軟にし、コーナリング中の旋回性能を向上させる効果があります。

メリット

  • フレーム剛性を弱める効果 フレームが硬いと路面からの入力を過度に受け止め、カートがコーナーで滑りにくくなります。一方、剛性を弱めることで、フレームが適度にたわむようになり、インリフト(内側の後輪が浮く動き)が発生しやすくなります。この動きは、カートの旋回性を高め、タイトなコーナーでもスムーズなライン取りが可能になります。
  • 旋回性能の向上 インリフトが誘発されると、後輪の抵抗が減り、前輪のステアリング操作がより効果的になります。この結果、コーナリング速度が向上し、タイム短縮につながることが期待できます。

デメリット

  • リアの剛性が低下すると、カートが旋回中にリアタイヤの接地圧が減少する場合があります。これにより、アクセルを踏んだ際のトラクション(駆動力)が不足し、スムーズな加速が妨げられます。

リアを固めるとは

「リアを固める」とは、セッティングにおいて、フレーム剛性を意図的に高め、リアの動きを抑制するセッティングを指します。これにより、カートのリアタイヤが路面にしっかりとグリップし、特に直線やコーナー立ち上がりでのトラクション性能が向上します。 メリット

  • トラクション性能の向上 リアの剛性を高めることで、加速時にリアタイヤがしっかりと路面を捉えるため、立ち上がりでの加速性能が向上します。これにより、ストレートの最高速度にも良い影響を与えます。
  • 安定性の向上 高速コーナーやストレートでは、フレーム剛性が高い方がカート全体が安定し、挙動の乱れが少なくなります。特に荒れた路面やグリップの低いコンディションでは、この安定性がラップタイムの安定に寄与します。

デメリット

  • 旋回性能の低下 リア剛性が高すぎると、インリフト(内側後輪の浮き)が起きにくくなり、カートがコーナーで曲がりにくくなることがあります。結果として、タイトなコーナーでの旋回性が悪化し、コーナリング速度が低下します。
  • リアの動きが制限される リア剛性が高すぎると、路面の起伏や微細な滑りに対応できず、特に低速コーナーではタイヤが過剰に負荷を受けてしまう場合があります。

前側のシートステーを緩める・取ることによる効果
後ろ側よりは効かず、緩やかにリアを抜くことができます。緩やかだからといっていきなり全部取ってしまうと危険なので路面状況と相談しながら緩める必要があります。

後側のシートステーを緩める・取ることによる効果
前側よりも効果幅が大きい為微調整には向かないと考えています。 私の場合、夏場や雨でもない限りここはあまり触りたくないが、出場するクラス・路面状況においてはその限りではありません。

前後で効果が変わることに対する解釈・考察
フレーム側のナット部分(青い棒)との距離が変わることによって支持基底面の面積が変わるので、フレームを支える力が変わることが原因だと考えられます。

共通して言えること
ナットの緩め具合で効果がかなり変わってくるので、どれくらい緩めたらどれくらい抜けるのかについては感覚値を持っておくことがレース本番において役に立つと思います。

今後のセット研究でやること
左回りコース・右回りコース・どのコーナーでリフトを誘発したいのかに合わせて左右のシートステーナットの緩め具合を調整してみることで、デメリットを最小限に抑えたセッティングに挑戦していきたいと考えています。

最後に
レーシングカートはシートステー1つに注目してもこのように車体特性がかなり変わってくる変数の多いスポーツです。個人の技量とマシンのセットが合わさって初めて勝つことのできるかなり面白いスポーツですので、皆さん是非一度体験して見てください。

アイルトン・セジ

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