2025.02.17
mao

時には狂った旅行もしたくなるしくそ長いブログになってしまうことだってある~前編~

 ところで一般人の言う旅行といえば、例えば1泊2日で小樽に行くとか、2泊3日で定山渓のちょっとイイホテルに泊まるとか、まぁだいたいそんなところが思い浮かぶだろう。別にこのようなスタンス・スタイルの旅行について何か言うつもりは当然なく、もちろん私だってちょっと留萌に行くかぁとふらっと出かけてみたりするので、そこまで目くじらを立てないで頂きたい。
 しかしたまにはちょっと大雑把で大味な旅行もしてみたくはなるだろう?そんな旅行気分を文章からなるべく味わってもらえるように、眠い眼をこすって出番が回ってきたブログを残業明けに書くことにした。
 大胆な旅行といえばはてさてどんなものが思い浮かぶだろうか・・・極端な例でいけばおそらく太平洋横断とかそうなるのかもしれないが、ここではあくまで日本国内での話に限定してもらうとして、そうすると日本をぐるっと1周したり(そういえば最近うちの会社を卒業した子に自転車で日本一周したやつがいたけど)、小笠原諸島まで出かけてみたりとかそういうのも楽しいかもしれない。
 しかし社会人にとって時間は有限、連休にあわせて頑張って有給を取るくらいが関の山だ。そこで今回は連休の前後に頑張ってくっつければなんとか行けるくらいの日数である「7泊8日」の旅行を敢行したときの話をつらつら書いていこうと思う。
 とまぁ長い御託はこれくらいにして。
 今回の旅行のセットリストは下記。舞台は東北であるが、むむ・・・こいつ・・・ワープの使い手か?

セットリスト

0.プロローグ
1.山形県・山寺
2.福島県・喜多方
3.新潟県・塩沢
ーー前編はここまでーー
4.新潟県・弥彦
5.山形県・酒田
6.秋田県・男鹿
7.青森県・津軽


0.プロローグ

 9月11日の朝。今回は朝6時の北斗号に乗る必要があったため、地下鉄も動く前の5時10分には家を出たのだが、開幕早々若干の雨と強めの風。出だしは最悪である。
 札幌駅の券売機で、予めえきねっとで買っておいた北斗とはやぶさの切符を受け取る。えきねっとで買うと少しばかりお得になるので、若人ならばなるべくなら活用していきたいところである。

 この時間の札幌駅は実はまだ売店がほとんど開いておらず、キヨスクも閉まっているため駅構内で朝飯などを調達することができない。一旦北口側から外に出て、駅到着前に見かけたローソンに立ち寄り、しっかりぽんたポイントをためつつ朝飯といくらかの飲み物を買い込み、ビニール袋を腕から引っ提げて改札を抜ける。
 朝6時発の北斗2号は6両編成での運転だった。まだ本格的に人波が動き始める前ということで、私の乗った4号車の乗車率は概ね20~30%程度だったが、それでも地下鉄も動き始める前の時間から、窓際の席がある程度埋まるくらいには函館行の需要はあるということでもあった。

 列車は定刻の6時に札幌駅を滑り出し、小雨の中南へ向けて走り出した。
 北斗2号は速達タイプで、他の北斗が止まる白老や登別、洞爺という駅を通過し最速で函館を目指す。途中の天気はとても微妙で、私は当然のごとく海側の席を確保したのだが残念ながら厚い雲のもとでの海は灰に濁った悲しい色をたたえていた。
 列車は定刻通り新函館北斗駅に到着、私はそそくさと新幹線ホームへ。お次に乗り込むのは9時35分に新函館北斗駅を出るはやぶさ18号。盛岡駅までは各駅に停車し、そこからは仙台、大宮、上野と爆速で東京を目指す。
 12時29分、はやぶさは定刻通りに仙台駅に到着した。ここまではいわゆるプロローグ、ここからが本格的な旅のスタートだ。

 今回使うのは「北海道&東日本パス」というやつで、有効期限が連続7日と豪勢に使える切符である。このような切符の性として普通列車にしか乗れないという制約はあるが、私のような頭のネジの外れた人間にとってはこのような切符はまさしく神が私のために与えてくださったようなアイテムなのである。
 このパスでは新幹線にも乗れないのでここまでの旅程は高額な特急料金を払っての移動となったが、ここから先はこの1万円ちょいのパスでいくらでも広大な東北をタダで乗り回し放題という素晴らしい移動が保証されているのである。神。まさしくGOD。
 そんな切符を持ってウッキウキの私がまず乗り込むのは仙台と山形を結ぶ仙山線だ。ここからは是非ともGoogleマップを片手に旅路を追いながら、本ページを下にスクロールしていってもらいたい。なぜならそのほうが楽しいからである。


1.山寺

 お手洗いを済ませコンビニで軽い昼食を購入し、仙台駅の有人改札を抜けて仙山線ホームを目指す。1日目は山寺駅で降りて立石寺を見て回る算段だ。
 時計が12時45分ごろを回るころに、E721系の4両編成が北側からホームに滑りこんできた。列車は折り返してそのまま山形行の快速列車となる。ドアが開き中の人を入れ替え駅に並んでいた人がそのまま列車の席に着いても、車内のボックスシートはおよそ1~2人程度が座るくらいで、まだまだ余裕があるようであった。 12時52分、仙山線の列車は定刻通り仙台駅を出発。

 列車は国見駅、葛岡駅と過ぎ徐々に山あいへ入っていく。仙山線の一つの区切りである愛子駅で少しばかり街の景色が戻ったが、それも一瞬で、ここから先は本格的に県境の山越え区間となる。作並駅を13時35分に発車し、より細かく蛇行した線形を描く仙山線を行く列車は警笛の回数も所要時間も増えていき、比例するように列車自体の速度もかなり落ちていった。そして13時57分、列車は山寺駅に到着。山形まで通して乗る人はほとんどおらず、ここまで残っていた人の半分近くが私と同じく山寺駅で下車した。

▲山寺駅

 歴史を感じさせる山寺駅の駅舎を撮影し、とりあえず立石寺周辺のマップを眺める。駅構内にも注意事項として貼ってあったが、山寺駅を起点として往復する場合2時間かかるようだ。
 気温は30度~32度となっていたが、さすがに去年の秋田ほど暑くはなかった。ただあまり遮るものがないため直射日光を浴びることになり、その点は少し苦しかった。


 山寺駅前の小さなストリートに並ぶお土産屋さんやお蕎麦屋さんを横目に東へ歩を進める。山寺日枝神社の鳥居が見えてきたならば立石寺の入り口はすぐそこ。階段を上るとカラフルな幕に彩られた立石寺の根本中堂が姿を現す。御線香が炊かれていたこともあり、どこか懐かしいかぐわしい匂いがあたりに漂っていた。この中堂を右手に今度は進行方向を西に変え、木陰の中を進んでいく。
 途中風車の装飾がなされたお地蔵さんやご神木、松尾芭蕉の銅像などを見つつ、立石寺の登山口へ進む。登山口とたいそうな名前はついているが、実際の山のように入山者の名前を書くとか靴選びもちゃんとしなければいけないとかそういう厳密なものではなくもっとライトな気持ちでよく、ただ立石寺にお参りするためには多くの階段を上らなければならないので、こういう名前に落ち着いているのだと思われる。

▲松尾芭蕉の訪れた地

 300円の入山料を払い、暑すぎて地面にへばりついている2匹の猫にご挨拶したらミニ登山の開始である。

▲かわいい(かわいい)

 立石寺は約1000段の石段を登らないといけない、もはや修行ともいえる場所で、実際途中の各所に建てられている立札には修行の文字がちらほら見える。
 先程の山寺駅周辺と比べると直射日光が当たらないだけ幾分ましなのだが、ただそのぶん階段を上るという重労働が体温をみるみる上げていき、あっという間に汗だくに。

▲登ってきた道
 鬱蒼とした森の中を進むような道を登っていくと、一つの区切りである仁王門が登場。この仁王門の前後で立石寺はかなり光景が変わる。仁王門を超えると一気に視界が開け、各所から眺望を望めるようになる。

▲仁王門

▲だいぶ登ったねぇ

 開けた景色を見ながらお堂を左右にいくらか見つつ、奥の院を目指す。景色こそ道中のほうが綺麗ではあるが、奥の院らしい厳かな佇まいはここまできたなら一見の価値あり。

▲まさしく山の中のお寺

 およそ2時間の探訪で立石寺を満喫。この日は札幌からの移動もあったので訪れたのはここだけ。仙山線で山寺駅から山形駅、そしてかみのやま温泉駅を目指す。
 山形城を見たいという気持ちはわずかにあったのだが、とにかく汗がすごくてとにもかくにもお風呂に入りたい気分だったので途中の山形駅での下車をあきらめ、さっさとかみのやま温泉駅に向かいお宿でこの日の疲れをゆったりと癒すのであった。

▲適当に選んだら格式高いお宿だった件


2.喜多方ラーメン

 さて2日目、この日はかみのやま温泉を出発し赤湯で山形鉄道に乗り長井駅で諸事情を済ませた後、今泉、米沢と下って米沢牛を食らい、福島、郡山と乗り継いで会津若松へ向かう算段である。
 であるが、全て書いているとまじで永遠と書き終わらないので一部を割愛しながら進める。いやもう実はかなり割愛しながら進めてるんですけどね。

 かみのやま温泉を朝8時前に出発し、30分かけて歩いて駅へ向かう。切符を提示してホームに入り、米沢行の列車をしばし待ち、定刻通りの8時30分に出発。
 赤湯駅手前では高所から赤湯の市街地を見下ろせるポイントがある、ここはかなり景色がいいので是非とも進行方向左手を陣取っておきたい。そしてこの景色が見えたら赤湯までもう1~2分ほどというところだ。

▲山形線の中でも一番いい景色が見れるポイント

 赤湯駅で下車し跨線橋を渡って4番ホームに停車している1両編成の山形鉄道長井線に乗り込む。地方の私鉄あるあるで車両ごとに様々なラッピングがなされていることが多いが、山形鉄道も例外ではなく、私が最初に乗った車両は青を基調とし、長井の市の花であるあやめが車全体にあしらわれたおしゃれな車両であった。

 列車は8時54分、定刻通りに赤湯駅を出発。駅を出てすぐに奥羽本線と別れ、長井線は左に大きくカーブして南陽市役所へと向かう。その後列車はほぼ田んぼの真ん中を突っ切るように進みながら、鶴の恩返しの資料館があるおりはた駅や列車交換が可能な駅である宮内駅、米坂線との交点である今泉駅を過ぎ、9時27分、長井駅に到着。諸事情を済ませ10時52分、荒砥駅からやってきた2両(なお後ろの1両は回送)の列車に乗り込み、この駅を後にする。

▲ラーメン大好き小泉さんのラッピング
 先程は通過した今泉駅で今度は下車し、米坂線に乗り換えて米沢駅へ向かう。
 今回この米沢に来た目的はただ一つ、米沢牛を食らうことである。予めある程度リサーチはしており、どうやら駅前に何店か米沢牛を取り扱っているお店があるよう。このうちのどこか空いているところに入れれば御の字であったが呆気なく目の前の「東洋館」に入ることに成功。かなりの高級店仕様で、ハンバーグで1700円、上級のステーキは7000円から1万円弱もするものもあるなど、数字だけでさすが米沢牛だということをいやというほど思い知らせてくる。今回は米沢牛の和風ハンバーグに野菜やライスなどがついたセットメニュー(1950円)を頼むこととした。

 頼んでから数分できたサラダをばりばりぼりぼり嗜んでいると、ついに和風ハンバーグがお出まし。もう色艶がなんか違う、いかにも私は美味しいですよアピールがすごいのである。いやまぁこれはソースのせいかもしれないが、でも確かにうまそうなことに変わりはない。さて実際問題どんなものだろうかとナイフで切れ込みを入れてフォークで口に運んでみると、いつもよく食べるハンバーグとは明らかに感触が違う。口の中でほろほろと自然に崩れ落ちるあの高級なお肉のかんじもそうなのだが、舌触りがすごくいいのだ。何度でも口の中に入れたくなるような心地の良い不思議な感覚にとらわれていく。舌の上で溶けるように転がっていくお肉、絶品として何と言わず。

▲うますぎる(1)

 さて最高のお肉に舌鼓を打ったところで、福島行の列車に乗り込むために再び米沢駅に戻る。
 米沢と福島の間には難攻不落な峠道がそびえたっており、ここを超える列車の本数はこれ以北と比較すると激減する。18きっぷを含めた普通列車の旅をする際には、つばさでの越境も視野に入れたほうがいい区間である。

 その後は福島駅、郡山駅と福島県の主要駅で乗り継ぎを行いながら磐越西線にて会津を目指す。本当は猪苗代湖を見たい気持ちもあったのだが、ここでは喜多方を選択することにした。喜多方といえば、そう喜多方ラーメンである。午前中に見たラーメン大好き小泉さんの伏線がなんとここでいきてくるという激熱展開である。
 会津若松で乗り換えた列車は17時48分に喜多方に到着。折り返しの列車は18時34分なのだがこれは間に合わないのでその次の19時55分の会津若松行に乗ることにする。そうするとこの喜多方ではかなり時間が余るので、時間のことは気にせずラーメンを味わうことができるというわけだ。

 今回目指したのは駅から歩いて15分ほどのところにある喜多方ラーメン屋さん。気温もまだ下がり切っていない中なので少し汗ばみながら、川を渡ってすぐのところにあるお店に到着。店内に入り1名であることを伝えると入り口からまっすぐ進んだところにあるカウンター席に案内される。メニューを開くと飛び込んできたのは喜多方チャーシュー麺1150円!もう他のラーメンのメニューなんて全く覚えていないくらいにはこのラーメンにもう目がくらんだ、迷わずこのラーメンを注文し、待つこと5分、ついにラーメンが運ばれてきた。

▲うますぎる(2)

 どんぶりを覆うチャーシュー、アクセントをつけるように添えられる卵も魅力的だがなんといっても喜多方ラーメン特有の麺が気になる。とはいえラーメンを隅々まで楽しむにはスープを味わうのも大事、ということで蓮華でスープを人すくいし、少し冷ましてから口に運んでみると、じわじわと口の中に甘みが広がってくる、独特の味がするではないか。甘みといっても決してくどくはなく、何度でも口に運んでしまいそうになるような癖になる甘さである。そしてチャーシューにも箸を伸ばしてみる、先ほどのスープがしみ込んだチャーシューは実に柔らかくそしてやはり甘い。そして本命の麺。少し平べったいきしめんのような、とはいえきしめんほど平べったくもなく、普通ときしめんの中間に位置するような面白い形状をした麺が喜多方ラーメンの特徴であるようだ。麺の面積が少し広いため程よくスープを吸って、ほんのり甘く、しかしさっぱりとした風味が口に広がる。気づけばスープを完飲してしまいそうになるほど飲みやすいスープとともにあっという間にラーメンを平らげ、最後に残った半熟卵も美味しく頂き、喜多方ラーメンは終了。これで1150円、旅先のグルメの中では安いもんだぜ。

 2日目はこれにて終了、最後は喜多方から会津若松に戻り、一瞬だけ強い雨に降られつつ、日帰り温泉に入って疲れを癒したのであった。


3.塩沢

 あっという間に3日目。3日目は会津若松から只見線に乗り新潟県は小出に出た後、上越線で塩沢へ南下し塩沢宿を見たあと、北越急行に乗って直江津方面へ。そして最後は信越本線の青海川駅で夕日を見て、越後線の吉田駅でターンエンドという具合だ。

 只見線の朝は早い。始発が6時08分なのだが、これを逃すと次は13時までないというからえげつない。朝寝坊しないように徹底的にアラームをかけて無事朝5時に起床。5時10分ごろにホテルを出発し、4時間半の旅路となることから予め物資を調達すべくセブンイレブンへ。一通りものを買い込んで曇天模様の会津若松駅に舞い戻り、改札を通って4番線にて只見線の緑色のラインの汽車が入ってくるのを今か今かと待つ。

▲只見線の車両

 5時40分ごろ、操車場から待避線を経由して汽車が1両でやってきた。待っている人は私以外には2,3人しかいなかったが、出発時は結局10人弱が乗り込み、ボックスシートが一通り埋まるくらいの乗車率にはなった。顔ぶれを見てみるとやはり旅人ばかりで、地元の人らしき人はこの時点では乗車していないようであった。

 6時08分、定刻通り列車は会津若松を南下すべく滑り出す。まだ朝も完全に明けきらないくらいの時間であったが踏切にはいくらかの車が既に並ぶくらいにはなっており、地方都市の朝の早さを実感する。七日町、西若松と停車したあと、列車はカーブを描き会津鉄道と若松の街に別れを告げる。阿賀川を渡ると本格的に田園地帯に車窓は切り替わった。私は進行方向右手に座っていたのだが、会津高田駅を出ると進行方向が北側になり、おかげで田んぼを照らす朝日を車窓越しに拝むことができた。天気は曇り予報であったが朝日の力が雲を打ち消すくらいには、雲は薄く天気予報がいい方向に外れていた。

 列車は6時41分ごろ、会津坂下駅に到着。対向列車との行き違いがあったが、驚いたことに会津若松行の列車は朝早くだというのに3両編成の列車に大量の高校生を詰め込んで満杯になっていた。このようなローカル線がいかに学生利用に支えられているかがよくわかる一瞬であった。

▲朝日に照らされる田んぼ

 会津坂下駅を出ると只見線は一気に山あいに入り、よりローカル線の装いを強くしていく。塔寺駅を過ぎ会津坂本駅を出ると北からやってきた只見川と並走するようになる。この只見川こそ、只見線を最強クラスの絶景路線に押し上げている川である。
 只見線は只見川と並走したり少し離れたり、ある時は只見川の上を跨いだりしながら様々な川の姿を私たちに見せてくれる。例えば会津桧原駅と会津西方駅の間では、朝早い時間だったこともあり川に立ち込めた霧がまるで雲海のような幻想的な演出を魅せてくれた。それからしばらくも水面には白いもやが立ち込めており、そのたびに乗客からひとときの歓声があがることもあったが、気温が上がるにつれてその景色も見られなくなっていった。

▲雲海のように美しい川霧の景色

 道中は高校生のような学生服をきた姿の人もちらほらいたので、ある程度の地元民の利用はあるようだ。そういう人たちは、旅人たちが目の色を変えて見入っていた川の景色なんて見慣れたものであるがゆえ、ほとんど興味も示さずずっと手元の電子機器に夢中なようであった。

 列車は只見駅を出ると、只見線のなかでも一番過酷な区間に突入する。只見駅から大白川駅の間は長いトンネルがあり、小出からの列車が大白川駅どまりで只見まで行かないものもあるくらい。そしてこのトンネルをくぐっている間にこれまで私たちを楽しませてくれた只見川は田子倉ダムに吸い込まれ役目を終え、大白川駅から先は谷の合間に気付かれた小さな農村を進むような車窓に変化する。これまでと違ってハイライト的な場所および風景があるわけではないが、日本のふるさと、里山を感じることができる車窓は必見である。

▲日本のふるさとのような和む景色

 小出駅の直前で魚野川を渡ると、アナウンスもはいりいよいよ4時間半かかった只見線の旅はこれにて終了。大満足の旅路、これだけでも一冊の本にできてしまうのではというくらいの大ボリューム路線であった(上述の通りこれでもかなり省略している)。
 今度は小出から反対方向、会津若松へ目指してみるという旅程も実施してみたいものだ。

 さて次の目的地は塩沢宿である。上越線の列車は新幹線との乗り換え駅である浦佐で多くの乗客を入れ替えた後、ほくほく線との乗換駅である六日町を過ぎ、11時35分、塩沢駅に到着。この駅で降りたのは私以外には地元民らしき2人のみであった。

 塩沢の歴史ある駅舎を撮影し進路を南東にとって5分ほど進むと、塩沢宿の通りが見えてきた。

▲あーーーこれこれぇ!

 電線も取り払われちゃんと格式ある宿場町の通りを再現している塩沢宿。写真で予めリサーチしておいたものと全く同じ風景が目の前に飛び込んできて、まさしく定食を頼んだら写真にあるとおりの定食が出されたという具合でもう満足である。
 しかしこういう宿場町は歩いてこそ真価を発揮するというもの、日陰が少ないなかなんとかそれを選んで直射日光を避けつつ塩沢宿を練り歩く。漆黒の屋根、柱に打ち付けられた縦型の看板、川越を思い起こさせる白壁の建物がなんとも風情たっぷりである。

▲あまりに良すぎるが?

 そんなこんなでちょうどお昼ご飯の時間でもあるので、ここいらで食事にすることにする。塩沢宿の通りでお食事処の看板を見つけたので、少しだけ外れたところにある食堂に入ってみることにした。中はまだ誰もおらず(というか塩沢宿自体ほとんど人影もなかったのだが)私はカウンターに案内され早速メニュー表を広げてみる。どうやらここのおすすめは近くを流れる川の名前を冠した魚野川定食というものであるらしい、これを頼んでみることにした。

 待つこと25分ほど、運ばれてきた定食を見て思わず美味そうという言葉が出てくるほど、定食の中身は絢爛であり、まさしくザ・定食というところであった。焼き魚も刺身も当然美味なのだが、私の口に特にあったのは卵焼き。これがほんのり甘く、なんとも香ばしい香りが口に広がるのがたまらないのだ。白米とあら汁を適宜つまみつつ、あとから出てきた茶わん蒸しやスイカのサービスなども賜って、30分かけて定食を綺麗に平らげた。ごちそうさまでした。
 退店際にはお店のおばちゃんと少しばかり話に花が咲き、にこやかな談笑ののちにお店を後にした。

▲うますぎる(3)

 次の列車まではもう少しばかり時間があるので、もう一回り塩沢宿を見て回ることにする。端っこの住吉神社まで歩いてUターンして駅のほうまで舞い戻るなど若干挙動不審な人物のような行動をしてみたりするのだが、それもやはりこの景観というか、この本当に最高な宿場町の雰囲気に駆られてしまうのだから致し方ない。

 今度は直江津方面に向かうため、長岡行の列車に乗り込む。13時32分発の列車に乗り、一つ先の六日町駅で降り、今度は北越急行に乗り換える。乗り換え時間6分というところで結構微妙な時間ではあったが案外余裕で間に合った。
 十日町駅で途中下車したのち、16時02分直江津に到着。ホームにはえちごトキメキ鉄道の車両や日本海ひすいラインの車両も止まっており、往年の特急街道のようにはいかずともいろんな会社の車両が見れて案外賑やかではあった。

 直江津を16時30分に出発し、今度は東へ進み青海川駅を目指す。道中雲の様子を見ながら「これだと夕日は見られないだろうなぁ」などと思いつつ、30分の乗車で17時05分青海川駅に到着。
 降りてみると空は少しずつ薄暗くなり始めた時間で、ただそれでも夏の終わりということもありまだ空自体は明るかった。そして問題の夕日であるが、かろうじてオレンジ色の部分が見えるくらい・・・というなんとも微妙な状態であった。当然、目で見てそのような状況なのでカメラに映すと本当に見栄えがよくない。
 まぁこれまでは天気が良すぎるくらいだったので日本海側の気まぐれな天候にうまく遊ばれたということにしておこう。

▲青海川駅

 次の列車までまだまだ時間があるので、やはりホームの上を散策したり、時には駅周辺に出てみたりとのんびりとした時間を過ごす。
 その間のイベントといえば貨物列車が高速で通過したり、特急しらゆき号が新潟に向けて走って行ったりと鉄道ファンならなかなか興奮する要素もあり、個人的にはなかなか楽しめる時間であった。
 そして問題の夕日のほうは、太陽が水平線に近付くにつれて分厚い雲の下から顔を出すようになり、先ほどよりも圧倒的に夕焼けっぽい景色が見られるようになっていた。まぁこれくらい見られたら十分でしょうかね。

▲夕陽なんてこれくらい見れればいいほう

 18時15分、信越本線の長岡行の列車がホームに滑り込んできた。列車内はそこそこ混雑しており、私は立席で我慢。すぐ先の柏崎駅で降り、JKの談笑を耳の左から右に流しつつ越後線の列車で、ホテルを取っている吉田駅を目指す。外はすっかり真っ暗になっており、この時間ともなると灯りのない田舎は景色を楽しむことなぞできないため、私はすっかり列車内で爆睡をかましてしまったのであった。

 19時48分、吉田駅に到着し3日目も無事終了。とはいえこの日は吉田駅に着いてからが大変で、なにせ駅の周りにご飯どころもご飯を買えるようなところもほとんどなく、一番近いファミマは品薄ですっからかん、駅前のホテルから往復3キロ近く歩いたところにあるローソンでなんとかご飯を調達したのである。というかこいつ毎晩ご飯の調達に苦労しているじゃないか←

(後編へ 続く!)

※本ブログは私が旅行毎に書き留めている旅行記からの抜粋になります。悪しからず。

▲北越急行の鉄道むすめちゃん あっと十日町駅


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