2010.07.01
社員R

ワールドカップ雑感

先日読んだキジ・ジョンソンのSparという短編小説がすごかったので、今回はその話をしようかと持ったのですが、作品内容について書くと会社ブログにあるまじき公序良俗に反するエントリーになってしまうのでやめました。

ファーストコンタクトものSFなのですが、その状況設定がすさまじくて・・・ああ、やっぱりこれ以上は書けません。

というわけで今回は時流に乗って、ワールドカップについて思いついたことを、つらつらと並べてみようと思います。

■アフリカン

90年イタリア大会のカメルーン旋風以来、アフリカの国々はサッカー新興国として注目を浴び続けてきました。その並外れた身体能力が発揮するダイナミックなサッカーはその後の各大会で強烈なインパクトを残します。しかし、惜しむべきことに彼等には戦術がなく、あたかもとてつもなく身体能力の高い少年サッカーといった趣でした。アフリカ国代表は、「この圧倒的な身体能力に戦術が備われば恐ろしいことになる」と毎回毎回言われながらも、出場したらやっぱり少年サッカーなのでした。

そして今大会、ついにアフリカ国は戦術を身につけます。今回出場したアフリカ国は、ガーナしかりコートジボワールしかり、高度にオーガナイズされた守備をしいていました。いずれもゾーンでしたが、各々の選手の分担するゾーンの境界が弱点となるゾーンディフェンスは、一般的なヨーロッパ選手の1.5倍(当社比)ほどの守備の間合いを持つアフリカンには相性のいいものです。なによりもゾーンは覚えることが少ない。これ大事です。

しかして戦術を身につけた今大会のアフリカ国家がどうだったかというと、今までよりも弱かったという驚嘆するべき結果に終わったのでした。多くの人は口を揃えて言います。「今回のアフリカンはなんか小粒だ」と。

つまり今までのアフリカンは戦術を教え込めないので、それを超絶的身体能力でカバーしようとしており、その超絶ぶりが強烈な印象を残しかつ、強い時は圧倒的な強さを誇っていました。そのかわり負けるときはコロッと負けるんですが。私が一番印象に残っているのは98年大会のスペインxナイジェリアの試合で、当時無敵艦隊と呼ばれていたスペイン代表は(そういえば今回も呼ばれてますね)、ナイジェリアに3-2で敗北を喫します。この3点がそろってわけのわからない点の入り方で、ピッチに躍動するオコチャ、オリセーといった選手たちを形容する言葉は「変態」以外思いつきませんでした。いやむしろ、あの常識はずれさ加減は宇宙人と呼んで良いレベルで、「無敵艦隊、宇宙人に敗れる」といった風情の試合でありました。

話を戻しますが、今まで戦術のないアフリカ国家を支えていた宇宙人たちがどうなったかというと、おそらく戦術を教え込む際の取捨選択においてふるい落とされたのではないかと。きっと戦術を理解できるアフリカンは小粒な選手なのです(そうかな?) だから、欧州で活躍しているドログバやエトーなどは、アフリカンとしては小粒、というか二流選手なのかもしれません。そんな小粒な選手が集まったところで怖くないですよそうですよ。そして今もアフリカ国内のピッチには戦術を理解できなかった宇宙人たちが今もくすぶっているに違いないのです。

■イタリア代表

1990年代までイタリアの国内リーグセリエAは世界最高峰のリーグとして君臨していて、そこには世界中から一流のアタッカーが集っていました。そのアタッカーを受け止めることで鍛えられたディフェンダーは世界最高レベルで、そのリーグから選出されたアズーリのセンターバックはそれすなわち世界最高のDFの代名詞でありました。

しかし、1995年のボスマン判決で、EU国籍の選手が外国籍選手として扱われなくなると状況が変わります。リーグのビッグクラブの最終ラインはイタリア国外のEU国選手が担うようになり、イタリア人DFは成長のチャンスを失います。そうした状況でカンナバーロは「アズーリ最後のセンターバック」という称号を戴くことになります。

で、今大会でカンナバーロがどうだったかというと、まあひどかったですね。こりゃ確かに「最後」という。ニュージーランド戦で1vs1をガンガン抜かれてましたしね。にもかかわらず代表レギュラーに選出されてしまうのが、アズーリの凋落を示しています。もうアズーリにはCBはいないのでしょうか。

また、GKに関しても、歴代の名前を並べてみただけでも、ゾフ、ゼンガ、パリュウカ、ブッフォンと、潤沢な人材に支えられてまず困ることのないポジションだったのですが、今回故障したブッフォンの代わりに出たGKが聞いたこともない名前だったので調べてみたらカリアリ所属とのこと。ああ、カリアリですかカリアリじゃしょーがないですね。名前も忘れてしまったので、仲間内ではずっとカリアリカリアリと呼んでいました。

そんなアズーリでしたが、結局グループリーグ敗退。なんとか次大会までには立てなおして欲しいものです。私好きなんですよねイタリアのサッカー。身も蓋もないところが。

■ブラジル代表

ポルトガルとの試合しか観ていないんですが、いやあもうすごいですね。ポルトガルが弱者のサッカーをやってましたからねえ。ドゥンガはよくもまあ、あれだけサボらない選手を集めたものだと感心します。

思えばドゥンガは久しぶりのまともな代表監督な気がします。ブラジルはパレイラだのザガロだのばっかりでしたからね。セレソンの監督というのは勝っても負けても文句を言われる職業ですから、そのへんを耐え切るメンタルを持ち合わせていることが第一条件とはよく言ったもので、いい選手が集まった年はその傾向が顕著です。パレイラなんかは典型的にこのタイプでしたよね。

■日本代表

結局イングランドとのテストマッチで採用した4バック1トップアンカー付きが、最後の最後にたどり着いた正解だったのでしょうね。

岡ちゃんという人は、後ろをがっちり守備を固めて、攻撃はスーペルな外人頼みのカウンターサッカーしか出来ない、いうなれば守備の監督なわけで、そういう人が攻撃サッカーを志向したことが本番直前までの迷走だったのでしょう。

カメルーン戦は言葉本来の意味でのワンチャンスをものにしましたし、オランダ戦を0-1で負けられたのはすごく良かったと思います。デンマーク戦はああも立て続けに直接FKが決まるのは運以外なにものでもなく、その運を呼び込む準備がそれまでの二戦で出来ていたのだと思います。

今大会の結果で世間がサッカーに注目してくれるのは大変結構なことで、日本国内におけるマイノリティスポーツを応援する身として、安堵する状況であります。

少しでもJリーグの観客動員が上向くことを、心から願っております。

社員R

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