過去のこのブログでは、出来るだけ最近出版されたITやビジネス関連の本を紹介(?)してきましたが、それらの本は基本的には誰かの成功譚だったり、優秀な人の理想的な話だったりするわけで、冷静に考えてみると、そのまま役に立つというものではありませんでした(少なくとも、わたしのような凡人には無理)。
言ってみれば、「いつもなんとなく本を選んで、なんとなく読んでみました。以上終了。」みたいな読書だったわけです。
しかし、6月になり、今年ももう半分過ぎようとしている現時点で、これまでと同じでいいのか!という考えがムクムクとわき起こってきました。ここは一念発起して、実際に読んで役に立つ本を読むしかないのではないか!!
(と、意味もなく内容もなく力んで前置きだけで結構な文字数を稼ぎましたw)
今回読んだのは「反社会学講座」(パオロ・マッツァリーノ著 ちくま文庫 2007年)です。
著者はイタリア生まれと称してますが、たぶんウソでしょう。
この本の文章のどこからもイタリアンな香りはしません。
ピザやマカロニやエキストラヴァージンオリーブオイルとは無縁な文章です。
きっと日本人が勝手に名乗っているにちがいありません(というのは、あくまでもわたしの想像です)。
著者の来歴からふざけてる本ですから、内容も当然ふざけています。と思ったら、実はそうでもなく、きついシャレと皮肉とユーモアが炸裂していて、しかも、かなり核心をついているのです。
ちょっとだけ、内容を紹介してみましょう。
◆平成になって少年の凶悪犯罪が増えているのか?
テレビや新聞によく出てくる平成元年から最近までの少年凶悪犯罪件数の折れ線グラフ(本書掲載。お見せできないのは残念です)は増加傾向を示しています。このグラフだけ見ると、確かに増えているのは間違いありません。
そして少年犯罪の増加を前提に議論をスタートすると、「近頃の若い者は・・・」が口癖のオトナの大好きな若者イジメの原因探しが可能になります。
例えば、テレビゲームが悪い、インターネットのやりすぎだ、ゆとり教育で遊びすぎなんじゃね・・・etc。
でも、もう少し長いスパンで少年犯罪件数グラフを見ると、件数のピークは昭和33年ころで、その後はずーっと減少傾向にあるのです。ちなみに昭和33年は今の4倍も少年凶悪犯罪があったのです。
ということは、もしかして、今の少年たちは良い子なんじゃないの?
◆日本人は「ふれあい」が好き?
心と心のふれあい、親子のふれあい、地域住民とのふれあいとか、いろんな「ふれあい」があるのですが、
この本では、まず日本全国に「ふれあい」という名のスナック(飲み屋ですね)がどれだけあるのかという調査からスタートします。
それが各都道府県に結構たくさんあるのです。
日本人はどうやら「ふれあい」が好きらしいと推測されます。
お役所は日本人の「ふれあい」好きにつけ込んで、「ふれあい」をキーワードに施策を進めます。
その結果、「ふれあい公園」や「ふれあい会館」のような「ふれあい」の名のついた施設がどんどん増えていきます。
そして、どれだけ都道府県別に「ふれあい」施設があるのかを調査したあとで、都道府県別の少年犯罪や校内暴力の件数を調べ、「ふれあい」施設数との相関関係を調べます。
「ふれあい」施設が多いほど、心温かな人々が多いと推測されるからです。きっと、「ふれあい」は犯罪や暴力を抑制するはずです。
でも、実際の調査の結果は・・・「ふれあい」が多いからといって、犯罪や暴力が少ないわけではない、むしろ多い場合もある。
あるいは、多いから「ふれあい」の精神を尊重しようと言うのか・・・。その結果はどうあれ、先生が生徒に「ふれあい」を求めるはどうかと・・・。話がずれてきました。。。
まだまだ、例はあるのですが、パオロさんという似非イタリア人は、社会学の方法を使って、社会学がいかにダメダメかを証明してくれるのです。
そして、ダメダメ社会学のデータを前提に議論を展開するテレビや新聞、お役所や大企業もダメダメなことを示唆するのです。
われわれも思考停止に陥って、テレビや新聞(インターネットや本も?)の言うことを鵜呑みにしていると、恐ろしいダメダメ地獄に嵌ってしまいます。
常に複眼的な視点と自分の頭で考えることが必要だ、ということを教えてくれるのです(本はそこまで明確に書いてませんが、結構この本を鵜呑みにしている自分はダメダメか・・・)。
・・・それにしてもパオロ氏の唱える「人間いいかげん史観」(人間という動物はいいかげんなものだという考え方)と環境問題「ED3P」説(あちらを立てれば、こちらが立たず)には深い共感を覚えたのでした。
F生