※好きなものを好きなように好きなだけ書こうと思ったらとんでもない長さになったので気をつけて!
宇宙人狼、流行ってますね。といってもAmong usのことではない。
一人プレイ専用SF人狼ゲーム「グノーシア」について、ようやくこれはとても良い作品だ、
という声がやっとあちこちから聞こえてきたなあと勝手にご満悦なわけである。
「グノーシア」はPS Vitaのダウンロード版がオリジナルとして2019年6月20日に発売。
その後2020年4月30日にSwitchのダウンロード版が配信開始。
そして同Switchのパッケージ版が2020年12月17日に発売された、人狼をアレンジしたSFアドベンチャーである。
Vita末期にそっとリリースされたゲームが、のちにSwitch版として発売。
そして満を持してパッケージ版の発売に至ったという歩み自体、90年代のインディーズバンドっぽい上り詰め方で
個人的にはもうそれだけでグッとくるのだけれどそれは一旦置いておく。
ちなみにVita版とSwitch版ではゲーム内容そのものに差異はないようだが、
バックログ機能やギャラリーモードの追加、
イベント発生条件の調整(公式によれば100箇所以上)が行われているそうなので、
今からプレイするならSwitch版をおすすめします。
オリジナル版を発売まもなく購入した身としては、ギャラリーモード、Vita版にもほしかった。ほしかった……
ざっくりしたゲーム内容としては、同じ宇宙船に乗り合わせたクルーに紛れたグノーシア(人狼)を
議論と多数決でコールドスリープ(追放)していく。すべてのグノーシアをコールドスリープさせるか、
あるいは生き残りクルーとグノーシアの数が同数になった時点で勝敗が決する(例外もあるが省略)。
要するに人狼とほぼほぼ同じルールとなっているが、ゲームの世界観に合わせて役職がアレンジされている。
たとえば占い師はエンジニア、霊媒師はドクターというように。もちろん役職は他にもあるが割愛。
また、ロジックや直感といったパラメタが存在し、経験値を得てレベルアップすることで
嘘に気づきやすくなったり、反論を封じるなどのスキルを取得できる成長要素もある。
また、ゲームシステム的にオリジナル人狼でできることが難しかったり、
あるいはできないということもある(「潜伏」や「スライド」など、)。
だがこういった制限は、人狼というゲームの低いようで高い敷居を低くし、
ゲーム進行のスムーズさを増加させる方向に働いている(と個人的には思っている)。
こういうローカルルールでの人狼なのだと思えば、数ループする間に気にならなくなるだろう。
ワンプレイに要する時間も5分からせいぜい20分くらいなので、非常に快適にループし続けることができる。
今「ループ」という言葉を使ったが、これは文字通りの意味となっている。
つまり主人公は、船内でグノーシア反応が発見され、議論でクルーとグノーシアが戦い、そして決着する、
という流れを延々と繰り返す状況下にある。
そして他のクルーは(一人を除く。後述する)このループが起こっていることに気づかない。
グノーシアに襲われた人間はなぜ消滅するのか、
なぜループするのか、グノーシアとは何者か、このループを終わらせる方法はあるのか。
こういった謎を解き明かすために情報を収集し、ループから脱出することが最大の目的になっている。
序盤はチュートリアルを兼ねたループとなっており、いきなりグノーシアに夜噛まれるようなことはない。
その後数十ループすると、いよいよ本格的に生き残りをかけて議論することになるのだが、
レベルが低い状態だと、主人公からはグノーシアであることが明らかである人物を疑っても同調してもらえなかったり、
あるいはうるさいと一喝され、人狼でいうところの「多弁吊り」されたり、逆に「寡黙吊り」されて悔しい思いをすることもある。
そんな時に頼りになるのがセツというキャラで、実はセツもまた主人公と同様にループに気づいている存在である。
主人公とセツは目的を同じくして、議論での振る舞いであったり、あるいは謎について情報交換を行っていく。
いわば主人公とセツは唯一の相棒である。ちなみにセツは主人公が船内で最初に出会う人物でもある。
主人公と同じくループし続けているセツではあるが、実は主人公とセツは
同時に同じ時間軸をループし続けているわけではない。
このゲームにおいてループとは、あくまで議論開始から決着までの期間であり、
次のループが時間的に必ず未来や過去であると確定してはいない。
たとえば主人公にとっては80回目のループが、セツにとっては53回めであったり、
逆にセツの方が95回めである可能性もある。
ループ前にはいた人物が次のループでは存在しなかったり、役割が変わっていたりもする。
そのためふたりの情報に齟齬が生じる場合もある
(ゲーム的にはちゃんとフォローが入って問題はないのでごあんしんください)。
映画「バタフライエフェクト」やゲーム「シュタインズ・ゲート」が好きで、
量子力学やパラレルワールドや世界線といったワードに
なんとなくピンとくるのなら理解しやすいかもしれない。
シュタゲでいえば、観測者がふたり存在していて、
未確定の世界線を行ったり来たりしているような感じか。
ちなみにこの状況やロールが異なる理由は、何らかの力によって
「別の宇宙」を行き来しているから、という仮説で語られていた(と思う)。
「別の宇宙」なのだから誰かがいてもいなくても不思議ではないし、役職が変わってもおかしいことはない。
具体的に言えば、前回グノーシアであった人物がクルーであったり、
仲の良かった人物と敵対関係にあったりなど。
もちろん、主人公やセツがグノーシアとなってクルーを追い詰める
「別の宇宙」も存在しているということだ。
登場人物は主人公を除くと全部で14人。
彼らにはそれぞれ「特記事項」という情報があり、特定の条件を満たすと徐々にアンロックされていく。
ゲームとしての目的である情報収集とは、全てのクルーが持っているこれらの特記事項を、全て解放することである。
なぜそうしなければならないのか、そうすることでなぜ謎が溶けてループが終わるのかは、
ゲームを進めていけばわかることなのでここでは触れない。
だがこの特記事項解放というのがなかなか一筋縄ではいかない。
クルーたちにはそれぞれ性格や特徴がある。
他人の嘘に気づきやすいが嘘をつくのが下手であったり、八方美人ゆえに真意が読みにくかったり、
論理に長けているがその冷徹さゆえ反感を買ったり、
いいヤツだけれどなんとなく吊られたり……というように、個性豊かというか、個性しかない連中ばかりだ。
なんならいわゆる「身内切り」だってしてくる。
そんな彼らと共にグノーシアとして生き残る、特定のロールで特定の行動を成功させるなど、
様々な状況をクリアしなければならないわけで、あともう少しだったのに……!
と、次のループに挑んでレベルを上げて、というように時間がどんどん溶けていく。
ただ、ある程度ゲームが進行すると、そういった条件が発生しやすい「別の宇宙」を
大まかに選択できる機能も出現するので、各人物の特徴をなんとなく覚えて自分のレベルを上げ、
スキルを駆使してループし続けていればいつか必ず全ての特記事項に辿り着ける。大丈夫。
余談だが、各人物にも主人公と同様にパラメタが設定されているのだが、
これがその人の特徴や性格を実によく反映していて、これもまた興味深い。
人狼と同様に、議論は決着がつくまで繰り返されるわけだが、
議論と議論の間にはインタールードのようなパートが差し込まれる(人狼だと昼と夜の間みたいなイメージ)。
ここでプレイヤーは経験値を使って各パラメタのレベルアップを行ったり、
船内にいるクルーに会いに行くことができる。
このインタールードでは時折イベントが発生し、協力を申し込まれたり、あいつは嘘をついていた等、
議論に関係してくる行動や情報を得ることがある。
これらは割と発生することなのだが、これまた特定の条件下でのみ発生するインタールードイベントがあり、
そのイベントでのみ特記事項が解放されることもある。
特記事項が解放されることのない特定イベントも存在するのだが、これもまた多岐に渡りまくっており、
一度通してプレイしただけではおそらく回収しきれないと思う。
というか、事実、選択肢の片方しか選択できないイベントもある。
特記事項解放に関するイベントは一度達成すればその後発生しないようなので、
それらだけ回収できればゲーム的には問題ないと思う。
しかしそうでないイベントや会話が無数に存在していて、
それを知れば知るほど、グノーシアというゲームはその魅力を増していく。
あの人物に実はこんな秘密があったのか、とか、グノーシアだから必ずしも……とか、
クルーたちの隠れた側面を知るほどに彼らを更に好きになる。
個人的には貪欲にイベント回収を目指してほしい。
途中で言ったようにゲームとしての目的は、特記事項の全解放となっている。
特記事項を解放したのち、特定の条件(これはゲーム中にヒントが出されるので多分気づきやすいはず)で
「別の宇宙」へ突入するとエンディングが始まる。それまでにはほとんどの謎が明らかになっているはずだ。
ただし、その結末は、おそらくほとんどのプレイヤーが望むものではないと思う。
確かに主人公はループを脱することができる。
でもそれは、ある人物が口にしていた言葉のそれとは異なる形で実現される。
決してバッドエンドではないと思う。
けれども、どうにも言いようのないやりきれなさが残って仕方がないのだ。
そのやりきれなさは、エンディングを迎えたあとのタイトル画面で明確に示されてしまう。
美しくもせつないその風景に、プレイヤーは胸を打たれ、どうしても考えるのだ。
「たったひとつの冴えたやりかた」はなかったのか、と。
さすがに長くなりすぎているなと思ってきたので、そろそろ閉じていこう。
といいつつ余談。
WEBに点在する開発者インタビューによると、当初グノーシアは
開発者自身も何が起こるのか分からないような構造を目指していたらしい。
規定されたルートに沿って進行するのではなく、あくまでもクルーたちの意思で
自然にイベントや目的が発生するような、あたかも神のような、
誰にもコントロールすることのできないなにかが気まぐれで、しかし矛盾なく駒を動かすような。
さすがにそれは難しいということでそのような実装はされなかったようだけれど、
しかしこれまた開発者インタビューによると、グノーシアは「147柱の神々」が動かしているという。
「人狼の神」「ループの神」「結果報告の神」……などなど。
どうです? 意味わからないですよね?
素人考えだと、内部パラメタが各人物に設定されていて、
特定のキャラ同士でそのパラメタの数値が増減したりするんだろうなあ……
くらいしか想像できないのだけれども、どうやらというか、もちろんそんなに単純なものではないらしい。
とにかく難しいことはようわからんが、グノーシアで起きていることは完全なランダムではなく、
すべてそういった神々が矛盾なく管理し、導いた結果だということだ。
プレイヤーがランダム発生だと思っている事象が、実は全て、そういった神々による御業であるというのは、
驚くのを通り越して、これ作ったひとたち、こわ……(もちろん褒めてます)とため息をつくしかない。
それにしてもVita版にもギャラリーモードほしかったなあ……
と未練たらしく思うものの、いくらループを繰り返したとしても、その先が時間として地続きでないとしても、
主人公の主観からすればそれは一筋の流れなのだから、すべては一期一会、一度きりの出来事。
そう考えれば、ギャラリーモードがなかったのは自然なことなのかもしれない。
本当にこれで最後だ。
最後にもう少しだけゲーム本編について触れておく。具体的には先述のエンディング後について。
エンディングを迎えたあと、
おそらくプレイヤーは実績解除履歴を見直すだろう(Vita版にもあったからSwitch版にもあるでしょ?)。
そこでエンディング後に感じた疑問は確信になると思う。
神々が作り給うたグノーシアの世界において「たったひとつの冴えたやりかた」が存在しないわけがないのだ。
あとはそれを見つけるだけだ。
正直なところ、これはちょっと検索すればすぐに見つかってしまうから、面倒であればそうしてもよいと思う。
ただ、どうしても自分でそれを見つけたいという方へ。
全ての謎は明かされているはずだ。繰り返しになるが、あとはそれに気付けるかどうかだ。
ここまで書いてきた中にいくつかヒントは置いてきたつもりだけれど、改めて記しておく。
この「ループ」はいつ、どうやって始まった?
目が覚めたとき、そこには誰がいた?
「別の宇宙」とは?
気づいてしまえばそれはとてもシンプルでかんたんなことだ。
なにしろ気の遠くなるようなループを繰り返してきたのは主人公だけではないのだから。
そこにはあなたもいたはずだ。
「別の宇宙」で最初の「ループ」を迎えるだけでいい。
そこには必ずあなたが想像するとおりの人物がいるだろう。
あとはすべてそのひとに任せよう。
これまでのすべての点と点が繋がり、すべてのループは角度を変え集合し、美しい球体となる。
あなたが望んでいるそんなエンディングに辿り着けるのは、あなただけだ。
タイヤ