プロジェクト・ヘイル・メアリーは「火星の人」の作者アンディ・ウィアーによる長編SF小説です。
上下巻合わせて650ページとそれなりに長いのですが、これがべらぼうに面白く一気に読んでしまいました。
冒頭主人公は、体にいっぱい管が刺さって寝かされた状態で目覚めます。自分の名前すら忘れた状態から、ここはどうやら宇宙船の中らしいということに気づきます。そして徐々に記憶を取り戻す形で、過去に何があったのかが綴られていき、主人公がなぜ宇宙船に乗っているのかが判明していきます。そして全体の1/8くらいで目的の全貌が明らかになり、残りの尺で何をやるのかと首を傾げていると、1/6くらい進んだところで驚天動地の出来事が起こります。
これはネタバレなので書けないのですが、このネタバレがこの作品の面白さの核になっているため、面白さを伝えようにも伝えられないというジレンマがあります。こればっかりは仕方ありません、読んで、としか。
主人公は幾多のミッションを通過して、ついに目的を達成します。ここで残り1/10ほど尺を残していて、残りページで何をやるのかと二たび首を傾げていると、ここから怒涛の展開が始まります。この最後のところは本当にすごい。
この作品のいいところは、科学に明るくない人にも優しいところです。イーガンのように何書いてるのかサッパリということはなく、とりあえず相対性理論あたりを知っていれば、だいたい理解できる内容です。
また主人公がひたすら実験をして問題を解決していくのですが、これがまた面白い。作中に出てくる「無重力で重さを量る方法」はなるほど!と思いました。やってることは日能研の電車広告に乗ってる中学入試レベルなんですね。
大森望が帯に書いた「三体の次はこれ」の文句に偽りのない傑作です。ライアン・ゴズリング主演による映画化も進んでいるということで、そちらも楽しみです。
(記: 社員R)