2012.04.24
F生

『ブーメラン』

4月も残すところあと一週間。楽しい(?)ゴールデンウィークが目前ですね。
世間では不況や就職難などの後ろ向きな言葉が氾濫していますが、その一方でGW中に日本を脱出する人が56万人もいるらしいです。
円高ドル安、ユーロ安が渡航者の後押しをしているとのこと。
その恩恵にあずかれる人たちがうらやましいのと同時に、ある意味、「平和」も感じますね。

そんな「平和」に水を差すような本をご紹介します。
マイケル・ルイスの最新刊『ブーメラン』です。
マイケル・ルイスは、映画になった『マネー・ボール』や、以前このブログでも紹介した『世紀の空売り』の著者です。
難解な経済事象を、皮肉とユーモアの混じった文章で解き明かし、けっして読者を飽きさせません。
この『ブーメラン』も、関係者への取材とインタビューに裏打ちされた興味深い内容となっています。

ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる [単行本] / マイケル・ルイス (著); 東江 一紀 (翻訳); 文藝春秋 (刊)

アメリカのサブプライム・ローンの破綻が、世界同時不況の引き金を引いてから早くも4年。
時を同じくしてヨーロッパの国々では、バブルが膨張し、あり得ない好景気の果てに大崩壊。
それぞれの国ごとに大きな打撃を受け、今日に至る。

◎人口30万人の小国アイスランドでは、漁師がにわかに投資銀行家となり、バブルに浮かれて債務を増やしGDPの8倍超の累積債務を抱えて国ごと破綻。

◎国家財政を粉飾してユーロの仲間入りをしたギリシャは、公務員が民間企業の3倍の収入を得ているのに、徴税を満足に行わず、国の債務額の把握すらできないまま、緊縮予算に反対しゼネストを続け、破綻にむかって突き進む。

◎小さな国土に流入した大金が不動産投資競争を引き起こし、住民の人数以上の建造物を建てた(あるいは建てかけた)末に三大銀行が破綻し、その債務を保証すると宣言して国ごと破綻に直面するアイルランド。

◎今やユーロを支えるドイツは、もっとも健全そうに見えながら、アメリカのサブプライム・ローンのモゲージ証券を買い漁ったため、他国のバブル発生の要因となり、その債権を回収するためにも、他国を救済せざるを得ない立場に追い込まれていく。

そしてそれらが引き起こす不況の波がブーメランのようにアメリカ(やその他の国)に戻ってくる。
結局、世界の金融はゼロサムゲームで、誰かが得をすれば、必ず誰かが損をする。その額は年々巨大化し、なおかつ富は一部に集中し、貧困は拡散していくのでした。。。

他人事として読むと非常に面白い本ですが、日々の新聞やニュースを見ながら、自分に引き戻してみると、とても「平和」な気持ちではいられなくなるのでした。(と、GWに休みのない私は「平和」な人びとを不安にさせようと試みるのでした・・・)

最後に、この本の冒頭に出てくるヨーロッパの金融危機を予見していた男は、次に破綻するのはフランスと日本だと予想する。
そして彼は、有効確実な投資は現物保有であり、すでに持っている金やプラチナの延べ棒などに加えて、5セント玉を2千万枚保有している。
5セント玉に含まれる銅やニッケルに6.8セントの価値があるそうだ。

・・・そして、私もこっそり1円玉を千枚保有している。
F生

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