2012.12.11
F生

「東西ミステリーベスト100 2013年」

例年のごとく、12月になると、一年の総括で各種ランキングが発表されます。

すでに発表された新語・流行語大賞。
大賞の「ワイルドだろぅ」は、たぶん来年の今頃には誰も覚えていないことでしょう。
スギちゃんは来年はベストジーニストに選ばれるかもしれませんが。

本の年間ベストセラーの第一位は阿川佐和子の「聞く力」(文春新書)。
出版界も不況でこの20年ではじめてミリオンセラーがなかったとか。
と思っていたら、今朝の新聞によると、出版社が急遽15万部増刷を決めて、今年唯一のミリオンセラーに。
オトナの世界のズルさを垣間見たような気がします。。。

ミステリーファンお馴染みのベスト10というと、「このミステリーがすごい!2013年版」(宝島社)と週刊文春の恒例年末企画「週刊文春ミステリーベスト10」です。
以前はこのベスト10を参考にミステリーを読んでいた頃もありましたが、最近は体力減退と財力衰退に伴い、ランキングは見るだけで、将来文庫化されたときの購入リストにメモするに留まっているのでした。
というか、最近のミステリーは、読むのに躊躇してしまうような大長編か、文体もトリックも軽いラノベ系のものか、広告やあらすじに騙されて読んで後悔するマスメディア一押し系のものが多く、新著を手にする気が起こらないのです。

やはり安定感があるのは古典でしょう。
文学でも音楽でも長く生き残っているものには、キラリと光る何かがあります。
経験則からいっても読んで(聞いて)後悔したことはありません(まあ、たまに後悔します。せいぜい10回に5,6回の後悔です)。

その古典的ミステリーがずらりと並ぶのがオールタイムのミステリーから国内・海外のベスト100を選んだ「東西ミステリーベスト100 2013年」(週刊文春臨時増刊)です。
週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌] [雑誌] / 文藝春秋 (刊)

ちなみに「2013年」と銘打っているのは、1985年版の「東西ミステリーベスト100」があって、今回は新たなアンケートによるリニューアル版だからなのです。
アンケートは日本推理作家協会、SRの会、各大学ミステリークラブなどの会員ら387人から回答を得た結果です。
ということでこのベスト100はかなり権威があります(たぶん)。

ちょっと気が早いですが、年末年始のお休みの読書の参考になるかもしれませんので、国内・海外のオールタイムベスト10を転記しちゃいます。
国内
1位 獄門島(横溝正史)
2位 虚無への供物(中井英夫)
3位 占星術殺人事件(島田荘司)
4位 ドグラ・マグラ(夢野久作)
5位 火車(宮部みゆき)
6位 点と線(松本清張)
7位 大誘拐(天藤真)
8位 十角館の殺人(綾辻行人)
9位 魍魎の匣(京極夏彦)
10位 本陣殺人事件(横溝正史)

海外
1位 そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー)
2位 Yの悲劇(エラリー・クイーン)
3位 シャーロック・ホームズの冒険(コナン・ドイル)
4位 幻の女(ウィリアム・アイリッシュ)
5位 アクロイド殺し(アガサ・クリスティー)
6位 長いお別れ(レイモンド・チャンドラー)
7位 薔薇の名前(ウンベルト・エーコ)
8位 ブラウン神父の童心(G・K・チェスタトン)
9位 羊たちの沈黙(トマス・ハリス)
10位 火刑法廷(ジョン・ディクスン・カー)

以上が2013年版のベスト10ですが、ミステリーファンならば、ほとんど読んでいるかもしれません。もし読んでいない本があるならば、ラッキーなので、是非読んでみましょう(けっして私は本屋さんの回し者ではありません)。

1985年版では国内1位は今回と同じ「獄門島」でしたが、海外1位は「Yの悲劇」でした。
それが今回のアンケートでは、1985年版4位の「そして誰もいなくなった」に首位の座を奪われてしまいました。
「そして誰もいなくなった」という題名の勝利かもしれません。
「Yの悲劇」は聞いたことがなくとも、「そして誰も・・・」はどこかで聞いたことがありますよね。
1939年に日本で初めて翻訳されたときの題名は「死人島」だったらしいですが(長谷部史親著「欧米推理小説翻訳史」による)、「そして誰もいなくなった」のほうが断然売れそうな題名です。
題名は知っているけれども、未読の方は是非読んでみてください。なかなかよくできたお話です。

実はこのベスト100は、11位以降、特に後半のランキングに隠れた名作が潜んでいたりします。そんな名作を発見するのもミステリーファンの醍醐味とも言えましょう。

というわけで、今回も特にヤマもオチも意味もなく終了するのでした。
よいお年を。(まだ早いか)
F生

P.S.おまけ情報
「このミステリーがすごい!2013年版」(宝島社)と週刊文春「週刊文春ミステリーベスト10」の国内・海外の第1位は同じ作品で、「64(ロクヨン)」横山秀夫と「解錠師」(スティーブ・ハミルトン)でした。
やはり年末年始はこれを読むのが正解か・・・?

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