2017.06.26
Tsuru

大いなり需要供給曲線

経済学に詳しくなくとも誰もが一度は目にしたことのある需要供給曲線。
市場では消費者の需要と生産者の供給が均衡する点で、取引される価格と数量が決まるという極めてシンプルでわかりやすいグラフです。

201706231

でも世の中の出来事についてこれを使うと納得できることが結構あると思うのです。身近な食べ物の例を見てみましょう。
(正しいということでありません。あくまで個人的に納得できる、ということです。)

なぜ規格外の農作物を破棄するのでしょうか

テレビで見栄えが悪い農作物が破棄される光景を目にすることがあります。
それを安く売ってくれたらなぁと思うのですが、なぜこんなことになるのでしょうか。
頭の中で市場に規格外の食べ物を流してみましょう。

201706232

需要供給曲線で供給量を増やしてみると均衡価格が下がります。
売り手は特にコストをかけることなく捨てていた食べ物を流通させるわけですから、同じ価格でより多くの食べ物を売ることができるので供給曲線が下方へシフトしたわけです。
これは規格外の農作物を市場に流すと供給が増えて、価格が下がり生産者の売上が減るとことを意味します。
(厳密には需要の増加率よりも価格の低下率が大きければという前提付きですが、農作物は生活必需品なので一般的に価格の変化に需要量がそれほど大きく左右されない品目と考えられています。簡単に言いますと、人々の胃袋の総量は一定なので、いくら食べ物が安くても、購入量の増加には限りがあるということです。)

どうやらスーパーにきれいな野菜が並んでいるのは、日本の消費者が神経質だからという理由だけではなく、規格という口実で流通する農作物の量を制限した方が価格を高くでき、収入が増えるという売り手の都合も働いていそうです。納得ですね。

なぜ食品廃棄物が減らないのか

今日どこのお店でお昼を食べようか、と悩むことはありますが、どこの店に入ってもメニューのほとんどが売り切れていたという経験をしたことはありません。
いえ、おそらくどのお店を選んでも売り切れていることはないでしょう。
気が変わって外食を止めてスーパーに行ったってほとんど売り切れているものはありません。

考えてみるとこれは異常なことではないでしょうか。
どの店も一定の食品廃棄物を出すことを前提に余分に仕入れているのです。
なぜでしょうか。

均衡需要量=消費者が食べる量ではない、ということが分かります。
つまり豊かな国が参加する食料市場の均衡価格には一定程度破棄される食品を余分に購入するための費用も含んでいるということです。
つまりそれくらい買う力がある(食料が安い)ということです。納得ですね。

日本の食料自給率を考えたりする

アマルティア・センというノーベル賞を受賞した経済学者が飢饉について分析したところ、十分な食料生産があった地域で、飢饉が発生していたことを発見しました。
まさに食料生産の十分な国で飢饉の起こり得るのは、私たちのように裕福な国が高く買うからだ、ということです。

市場には明確な境目がないのです。売っているものは何でも買える。

人々に食べ物がいきわたるかどうかは、単純に食料生産の問題ではなく、その値段で(均衡価格で)買えるかどうかが大事ということです。

とすると、このようにしてお腹にたまった贅肉を今度はわざわざお金を払ってランニングマシンに乗ってダイエットしていることを反省するだけではいけません。
日本では食料自給率の向上が叫ばれていますが、いざ食料不足のときに日本人が買えるのかどうかも議論しないといけませんね。農家の人がもっと高い値段で買うと言っている他の国の人に売っても文句を言えないと思いますから。

需要供給曲線の上にあるもの

そんなことを考えていると、おっ、こんなところに行列が。

IMG_20170604_075418

ほう
IMG_20170604_080042

なんと50円!

IMG_20170604_085143

私の後ろで売り切れていました。

これが需要と供給のギャップというものです。

201706241

50円で売れるパンの数よりも、買いたいと思う人の需要の方が大きくて売り切れ。
納得ですね。

市場では不足しているものは常に安く、余っているものは常に高いのです。
そして、同一の需要には限りがありそうです。

個人も会社も世の中に不足しているものを常に探さなければなりません。
しかも、それをライバルよりうまく売ることが求められる。

お金をめぐる競争を通して社会を豊かにする、どうやらそれが私たちの生きる資本主義社会の理念のようです。

お金で買えるものは何でも買える。でも、買えるのは売っているものだけ。

シンプルな需要供給曲線の上にはこのような私たちの営みがあるようでございました。

一覧に戻る