2019年春から仕事で大阪に滞在しており、大阪でいくつかのコミュニティ、勉強会に少しずつ参加させて頂いています。
2019年8月に、関ジャバさん(関西のJava User Group)主催で、マイクロソフト・コーポレーションの寺田佳央さんを迎えて開催された「てらだよしおまつり in 関西 Day2」に参加する機会がありました。
その勉強会の前半では、
AzureでのJavaの開発、コンテナ技術を使った開発などについて寺田さんからセミナー形式でご紹介頂き、
後半で、寺田さんからのご提案で「アンカンファレンス風セッションをやってみよう」ということになりました。
そのアンカンファレンスがとても面白く、全国各地で活動されているコミュニティ、勉強会で取り入れて頂けそうなので、
かんたんに紹介してみようと思います。
この投稿をみて、「面白そうだな」、「うちの勉強会でもアンカンファレンスやってみようかな」とちょっとだけでも思って頂けたら幸いです。
アンカンファレンスは、「カンファレンスじゃない」という意味で使われる言葉です。
まず、「カンファレンス」、よく行われる「セミナー」の形式についてみてみましょう。
まず、一番わかりやすい「セミナー」形式から。
セミナーは、専門知識を持った講師が講演をし、その講演を聴いて勉強したい人が参加者として数十名〜数百名程度集まる形ですね。
講師は、1プログラムあたり、基本的に1名となるケースが多いです。
「カンファレンス」というのは、主に研究会、協議会、検討会や会談を指す、とされています。
引用: Wikipedia「会議」のページ
カンファレンス(conference):会議におけるカンファレンスとは、主に研究会、協議会、検討会や会談を指して呼ぶ。プレスカンファレンスとは、取材記者との間で会議が行われる訳ではなく、記者発表会の意味である。記者と質疑応答などが行われる。
先進的な分野、先行き不透明な分野などで、複数名の有識者が討論し、モデレータ1名が会議を進行し、その様子を数十名〜数百名の聴講者(参加者)が聴く、という形でしょうか。
しかし、ITのコミュニティで「○○カンファレンス」というと、イベント名として使われ、その形式は一般的なセミナー形式になることも多いです。
「セミナー」、「アンカンファンレンス」とも、専門家、有識者が登壇し、そこで話す内容を参加者が聴く、ということで、参加者は聴くことが主になります。
プログラムの最後で質疑応答が組み込まれることもありますが、質問するのは参加者の中で数名程度ですね。
アンカンファレンスは、前述の通り、「カンファレンスじゃない」という意味をもちます。
セミナーやカンファレンスは、参加者が聴く側にまわる、ということも前述でご紹介しました。
そのカンファレンス形式ではない、ということで、アンカンファレンスは、参加者が主体的に発言することが大切です。
ただ、闇雲に始めてみて、全員が一斉に発言しても、何もなりません。
最低限、進め方とルールは決めておく必要があるでしょう。
正解は一つではないと思いますが、「てらだよしおまつり」で行われた様子をまとめます。
一例としてお読み頂き、少しでも、一部分でも参考にして頂けたらと思います。
議論を1本立てにする場合、おおざっぱに以下のようにするといいでしょう。
もし、テーマを2本立てにする、という場合、たとえば、
のように2本立てにする場合は、議題を決めるところからまとめまで、もう一本となるので、
途中で休憩をはさみ、そのぶん、議論する時間を短くして2時間で収めるなど、時間を調整するのもいいでしょう。
では、それぞれについて具体的に、特に当日は進行役としてどのように進めていけばいいか、まとめてみます。
数十名の参加者であれば2名程度、アンカンファレンスの進行役を決めましょう。
小規模での開催であっても、1人で心配であれば、複数の人で協力して進めるといいでしょう。
また、規模が大きくなるとまとめるのも大変になると思うので、数名の進行役でフォローし合いながら進めましょう。
てらだよしおまつりでは、30名程度の参加者でしたが、マイクロソフトの2名の進行役で進めていました。
開催前に、参加者の人数がほぼ決まると思いますので、当日に参加者のグループをいくつ作るか、目安を予め決めておくといいでしょう。
何人以内にしなければならない、というルールはありませんが、1つのグループは、10人前後がちょうどいいかと思います。(全員が発言できるよう、グループの人数は多くなりすぎないようにしたほうがいいでしょう。)
まず、参加者全員に、議論してみたいテーマを書いてもらい、集めましょう。
【注意】
ボールペンやサインペンなどが必要になります。
人数が多くなると全員分揃えるのが難しくなりますので、
イベント告知ページなどで、参加者にボールペンなどの筆記用具を持ってきてもらうように依頼するといいでしょう。
主催者側でも予備で数本、用意しておきましょう。
テーマは、
– 自分が気になっていること、疑問に思っていること
– 自分が考えていることがあるけど、他の人の考えがどうなのか聞いてみたいこと
などを書いてもらうといいでしょう。
大きめの付箋紙数枚、あるいは、A4の紙1〜2枚程度を配り、5分程度を目処に、テーマを1つ以上書いてもらいましょう。
書いてもらったテーマを集め、次に、議題決めに進みます。
書いてもらった付箋紙や紙をテーブルなど(付箋の場合はホワイトボードもアリ)へ集め、似たようなもの、共通するものがあればまとめましょう。
似たものがない場合は、無理にまとめなくても大丈夫です。
次に、集まったテーマに対して、参加者全員から、自分の興味のあるものに投票してもらいましょう。
投票は、テーマを書いた紙や付箋紙に●印をひとつずつ書いていくか、「正」の字を書いていきます。
投票してもらう票数は、[参加人数から予め決めておいたグループ数 – 1] としてもいいでしょうし、[1票だけ] としてもいいと思います。
[参加人数から予め決めておいたグループ数 – 1]とするのは、基本的にグループ数を投票するが、自分が投票したものの分を引く、という感じですね。
[1票だけ] とする場合、自分が書いたものでも、他の参加者が書いたものでもいい、というようにするといいでしょう。
また、似たようなもの、共通するテーマをまとめた場合、それらを一つのテーマとして議論できそうであれば、一つのテーマとして、そこに投票してもらってもいいでしょう。
全員が投票したら、投票数の多いものから順に、予め決めておいたグループ数のテーマを議題として選びます。
議題が決まったら、参加者のグループ分けに進みます。
参加者全員に、決定した議題のいずれかに入ってもらいましょう。
このとき、人数が5名に満たないグループが出てきたら、そのグループは廃止し、他のグループに入ってもらうといいでしょう。
また、参加者が多い(15名以上)場合には、同じ議題で2つのグループに分けるのもいいと思います。
このとき、進行役は、どのグループにも属さずに、全体の進み具合を見渡していきましょう。
各グループを回りながら、ちょっとずつ議論に入っていくのもいいと思います。
また、各グループに、アンカンファレンスを経験したことのある人が1人以上ずつ入ることが望ましいです。
経験者でなくても、コミュニティのスタッフにアンカンファレンスの進行手順を共有し、各グループにスタッフに入ってもらうといいでしょう。
「こうしなければならない」という決まりはないので、柔軟に進めていきましょう。
ここからが本番、各グループで議題について議論していきましょう。
初対面の人どうしがグループに集まるので、最初はダンマリという状態になるかもしれませんが、その場合、各グループに経験者やスタッフから、議題の紙に書いてくれた参加者に話を振ってみるといいでしょう。
そして、その疑問について、実際に取り組まれている方がいたり、意見を持ってる方がいるかどうか、グループ内の人に発言を求めてみるといいでしょう。
同じ議題に興味を持っている人が集まっているので、きっと話は進んでいくはず。
発言する人に偏りが出たら、軌道修正していくといいと思います。
まだ発言していない方がいたら、その方にも意見を発言してもらえるよう、振ってみましょう。
そして、議論の中で一番大事なことがあります。
それは、、、
他の人を攻撃、非難することは許さないこと。
共感できる意見があったら積極的に称賛する、褒めること。
発言した人、つまり、グループ内の人すべての安全を確保することが大切です。
議論の時間が終わったら、進行役が終わりを宣言し、全員に注目してもらいます。
そして、各グループから、発表者1名を選んでもらい、どのような議論をしていたか、発表してもらいましょう。
発表者は誰でも構いません。
各グループに入った経験者やスタッフでも、議題を書いた参加者でも、他の参加者でも、誰でも大丈夫です。
発表者が発表する中で、他の参加者の方に補足してもらうのもいいでしょう。
なお、この発表というのは、結論を出すというものでも、グループで共通の見解を出すというものでもないので、発表者の方はプレッシャーを感じる必要はありません。
こうして、それぞれのグループで議論した内容を全体にシェアして、一通りのアンカンファレンスは終わりとなります。
これまでアンカンファレンスの流れをざっとまとめてみました。
一般的なセミナーは、専門的な知見を持った講師から、生きた最新の情報をインプットできるメリットがあります。
これから先も勉強会ではセミナー形式が多いでしょう。
しかし、セミナー形式だけでは、どうしても受け身になりがちですよね。
もし、勉強会を主催、運営する立場の方がこの投稿をお読み頂いていたら、勉強会の前半はセミナー、後半でアンカンファレンスを取り入れて、セミナーで聞いたことの振り返りや、日頃の疑問についての議論などをしてみてはいかがでしょうか。
振り返りをテーマに議論する人がいると、講師の方へのフィードバックになるかもしれませんし、日頃の疑問について議論している人がいると、今後の勉強会のテーマを決めるのに参考になるかもしれません。
勉強会に参加する側の方がお読み頂いている場合も、主催者、運営の方に、アンカンファレンスの導入を提案してみてはいかがでしょうか。
参加する側も、主体的に参加できたという実感を持つことができて、満足度が上がるかもしれませんよ。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
M.clacla